休眠会社とは?

休眠会社とは?

休眠会社とは?休眠の手続きやメリット・デメリット、復活の方法も紹介

会社の経営者の方なら、一度は休眠会社という言葉を聞いたことがあるかもしれません。

「会社を存続させられない事情ができたけれど、廃業するか悩んでいる」「一旦事業を休業させたいけれどどうしたらいいかわからない」と悩んでいませんか?

こちらの記事では、休眠会社についてのさまざまな情報を解説していきます。

休眠会社についての概要から、会社を休眠させるメリットやデメリット、休眠か廃業かの判断基準について知りたい人は、ぜひ最後まで読んでくださいね。

休眠会社とは?

まずは、休眠会社とはどういう状態を指すのかを説明します。休眠会社にする理由や目的にはどのようなことがあるのかも、あわせて確認してみましょう。

長期間活動していない会社のこと

一般的に、休眠会社は「長期間に渡り企業活動をしていない会社」のことを指します。また、会社第472条1項では、「株式会社であって、当該株式会社に関する登記が最後にあった日から12年を経過したもの」のことを休眠会社と定めています。

12年と定められている理由は、会社法第332条2項で「株式会社の役員は、任期を最長で10年まで伸長することが可能」と定められているため、10年に1回は必ず登記を行わないといけないからです。そこから2年以上経過して、登記が行われていない会社は、「休眠会社」という扱いになります。

また、登記が行われていない場合でも、税務署で休業の届けを出すことで、経営者の判断によって休眠会社として登録することも可能です。

休眠の理由は病気や事故などさまざま

会社や経営者によって、休眠状態にする理由や事情はさまざまあります。よくある休眠の目的は以下のようなものです。

●経営者の高齢化
●経営者の病気や怪我
●事業を再生するために時間を作るため
●廃業するための準備
●別の事業が忙しく手が回らないため

これらのさまざまなケースによって、休眠状態となっている会社のことを休眠会社と呼びます。

廃業とは違い、再開したいと思えば事業再開できるのが休眠会社です。

みなし解散や廃業とは違う?それぞれの意味を解説

休眠会社と同じような状態に思われるものに、「みなし解散」や「廃業」があります。ここからは、それぞれどのような状態なのかをわかりやすく解説します。

みなし解散は法務局の登記官が強制的に解散手続きすること

みなし解散は、登記手続きが行われず、長期の間放置されている会社を、法務局の登記官が強制的に解散させることです。

先ほど休眠会社の解説でも示した通り、法律上での休眠会社は12年以上登記がされていない会社となり、それに当てはまる会社がみなし解散の対象になります。

みなし解散は、政府が決めた日取りで不定期に行われ、法務大臣の公告が行われた後2ヶ月登記しないとみなし解散となります。

廃業・清算は自主的に事業を廃止すること

みなし解散が、登記官に強制的に解散させられるのに対し、廃業や清算は経営者が自主的に事業を終了させることです。

事業が終了するということで、「倒産」をイメージする人も多いかもしれませんが、この2つにも違いがあります。

●廃業:債務を完済することができる経営の状況の中、経営者が任意で事業を終了させる
●倒産:債務を完済することができない経営の状況のため、致し方なく事業を終了させる

倒産と違い、理由をもって自ら事業をたたむのが廃業なので、倒産ほどネガティブではないことが多いです

休眠会社のメリット5つを紹介

ここからは、会社を休眠状態にすることのメリットを丁寧に紹介します。廃業にしてしまわないことで受けられるメリットがあるので、事業をどのようにして行こうか悩んでいる人はチェックしてください。

●いつでも事業を復活させられる
●事業再開の手続きが比較的容易
●法人税や消費税の支払いが免除になる可能性がある
●廃業する場合にかかる費用がかからない
●社会保険や厚生年金を切り替えて保険料の削減が可能

いつでも事業を復活させられる

会社経営をしていて、何らかの続けられない事情ができてしまった時、いずれ復活したいと思っているなら、すぐに廃業にするのではなく休眠会社にしておくといいでしょう。

例えば、経営者の持病が悪化してしまい、しばらく治療に専念することになったとき、治療中は事業を停止したいけれど完治したらまた事業を再開したいということがあるかもしれません。

そのような場合、廃業にするのではなく休眠会社にしておくことで、いつでも自分のタイミングで事業を復活させられるのがメリットです。

休眠や事業再開の手続きが比較的容易

会社を休眠するのは比較的簡単な手続きで済むのが、2つ目のメリットです。法務局で登記をしたり税務署で確定申告をしたりせずとも、休眠させることができますよ。

休眠の届出を、税務署や市区町村の役場へ提出するだけで手続き完了なので、費用も無料で事務作業がほとんど必要ないのは嬉しい特徴ですね。

また、事業を再開する際も、許認可の再取得や再申請の必要がないため、比較的容易に再会が可能です。

法人税や消費税の支払いが免除になる可能性がある

法人税や消費税は、会社が活動していて所得を得ているときや、事業を行う上での取引に課せられるものです。

そのため、休眠会社のように、存在はしているけれど事業を停止している状態ならば、税金が発生しません。

法人税は会社の所得に課せられるため、休眠して所得がない間は課せられないものです。また消費税は、事業で行う取引に課せられるので、こちらも事業を行わない限り課税されません。

廃業する場合にかかる費用がかからない

廃業するには、休眠会社にするよりも多くの手続きが必要になるので、もしそれらを税理士などに依頼するなら、依頼報酬を支払う必要があります。

廃業には、「解散の登記」、「清算人選任の登記」、「清算後の清算結了登記」などが必要です。

休眠にすれば、これらの費用や手続きが何もかからないので、廃業よりも手軽だと言えます。

社会保険や厚生年金を切り替えて保険料の削減が可能

休眠会社にすると、社会保険を国民健康保険と国民年金に切り替えることができ、それにより保険料を削減できるのがメリットです。

会社を経営している中で、社会保険料は比較的負担の大きい出費なので、休眠させる間は切り替えるといいでしょう。

国民健康保険・国民年金に切り替えるには、年金事務所に「健康保険・厚生年金保険適用事務所全喪届」を提出する必要があります。

休眠会社のデメリット5つを紹介

ここまでは、休眠会社にすることによるメリットを5つ紹介しましたが、デメリットもチェックしておきましょう。

●手続きをして休眠を届け出なくてはいけない
●毎年税務申告は必要
●長期間で休眠し続けるとみなし解散となる可能性も
●固定資産税を支払わないといけない可能性も
●役員の変更登記の必要あり

手続きをして休眠を届け出なくてはいけない

何をするにも手続きは必要ですが、休眠会社にするためにも何らかの手続きは必要です。

また、手続きをして休眠会社にした後も、免除にならなかった法人住民税などの均等割を支払いを継続する義務は残ります。

毎年税務申告は必要

休眠会社の場合でも、税務申告は毎年行う必要があります。

手間がかかるのもそうですし、もしこれらの作業を税理士などの専門家に依頼しているなら、依頼費用を支払い続ける必要があるので注意しましょう。

長期間で休眠し続けるとみなし解散となる可能性も

最後の登記から12年が経つと、法律上でも休眠会社とみなされますが、さらに放置し続けるとみなし解散をさせられる可能性があります。

法務大臣からのみなし解散の公告の日から2ヶ月の間に、事業を廃止していないことを届け出ればみなし解散の回避ができますが、これをしなければ清算となることを覚えておきましょう。

固定資産税を支払わないといけない可能性も

休眠していようとなかろうと、法人の所有する土地や家屋など不動産には自治体から固定資産税が課税されるので、これらの支払いは残ります。

ただし、同一市区町村内の課税標準額によっては、固定資産税が免除になるので確認しましょう。土地なら30万円、家屋なら20万円未満で免除となります。

役員の変更登記の必要あり

休眠中でも、役員の任期は経過するため、最長10年に1度は任期満了にともなって役員変更の登記を行う必要があるので気をつけましょう。

この変更登記を期間中に行わなかった場合、100万円以下の過料が課せられます。(会社法976条)

休眠するか廃業するかの判断ポイント4選

何らかの事情で事業を継続できない時に、休眠会社にするか廃業にするかの選択肢があるので、多くの会社の代表が悩むところかもしれません。

ここからは、「休眠と廃業、どちらを選ぶのがおすすめか」の判断となるポイントをわかりやすく紹介します。

自分のケースでは、どちらを選ぶ方が損がないのか、合っているのかを考えながらチェックしてみてくださいね。

廃業と維持のコストを比較する

廃業と休眠を比較すると、廃業する方がコストや時間がかかります。それに対して、休眠する場合、その手続き自体は容易でコストもそれほどかかりません。

ただし、休眠にしてしまうと、そこからまだ会社を維持していかなくてはならないので、維持費や維持の手間がかかり続けます。

どちらの方がいいのかはケースによりますが、維持し続ける必要がある会社なのかを考えて選ぶ必要がありますね。

復活した後の事業展開に希望があるか

休眠するということは、いずれ会社を復活させるということになりますが、再開後に事業をどのようにしていくのか、希望が見えているのかというのも判断材料の一つです。

休眠に至った理由が、事業内容が時代にあっていなかったり、今後縮小していく業界であったりするなら、休眠して再開したところで上手くいく可能性は低いのではないでしょうか。

もし、何らかの正攻法が見えているなら休眠も1つの手ですが、難しいなら廃業するのも方法と言えます。

復活してからの事業の担い手の有無

もし、経営者の病気などで事業を継続が難しくなった場合でも、その子どもなどが将来承継すると考えているなら、休眠させておくといいでしょう。

反対に、自分がもう経営が難しくなり、事業譲渡できる後を継ぐ人が誰もいない状況ならば、廃業を選ぶしかないとも言えます。

会社に価値があるか

過去の運営の中で、申告漏れや納税遅れ、税金の延滞などの履歴が残っていると、もし事業を再開しても順調に復活するのが難しいことが多いです。

そのような状態の会社を誰かに引き継ぐとしたら、引き継がれた人が大変な思いをすることも考えられるので、廃業を選んで会社をたたむ方が良いかもしれません。

休眠会社で決算や申告を行わないとどうなる?

それでは、もし会社を休眠させたとして、支払う法人税がないからと、決算や申告を行わなかったらどのようになるのでしょうか。

活動をしていないので利益が発生していないなら、支払う法人税もないので、決算や申告は行わなくても実害はないと思う人もいるかもしれませんが、実際は大きな問題が起こる可能性があります。

どのようなことが起こり得るのか、詳しく確認していきましょう。

青色申告の承認の取消し

2事業年度連続して期限内に申告書の提出がない場合、青色申告の承認が取り消されます。
青色欠損金の繰越控除をはじめとする、青色申告の特典が使えなくなってしまいます。そして、再び承認の申請を行ったとしても、その申請が却下される場合も。つまり、事業を再開する年度に、青色申告の特典を受けられない恐れが出てきます。

また、再開する事業年度に利益が見込まれ、休眠前の事業年度の青色欠損金があり、これらを相殺させようとしても、欠損の生じた事業年度以降に無申告の事業年度がある場合、それを行うことができません。

平成28年度の改正で青色欠損金の繰越期間が9年から10年に延び、納税義務のある人にとって有利な改正が行われたわけですが、決算・申告を毎事業年度行っていなければその恩恵に与ることができません。

地方税の均等割

休眠中であっても、地方税の支払い義務は負っています。地方税は利益が出ているか否かに関わらず、均等割(資本金等の額が1,000万円以下の法人で7万円から8万2千円程度)を支払わなければなりません。

もし申告をせずに、さらに均等割も納付していなければ未納の税金が増えていくことになります。ただし、休眠中の法人でまったく事業を行っていないと認められれば均等割が免除される場合があります。

みなし解散

先ほども解説しましたが、休眠会社を放置してしまうと、みなし解散させられる可能性があるので注意が必要です。

株式会社は最後の登記があった日から12年を経過すると会社法上の休眠会社となり、法務大臣が事業を廃止していない旨の届出を2ヶ月以内にするよう官報に公告します。
その届出をしないときは、その2ヶ月の期間の満了の日に登記官の職権により解散登記がなされます。

事業再開後に書類が揃えられない

決算を行っていなければ当然決算書は存在しないですし、申告や納税を行っていなければ税務署は納税証明書を発行してくれません。

無申告のままにしておくと、事業再開し銀行から融資を受けようとする際に求められる書類を揃えることができない可能性があります。

休眠会社のための手続きを詳しく解説

ここからは、休眠会社にするための手続きを詳しく紹介します。どのような書類が必要なのか、手続きに費用がかかるのか、など気になるポイントを見ていきましょう。

必要な書類

休眠会社にするためには、各行政機関への書類提出が必要です。どこにどのような書類を出すのか、少しややこしいので以下の表で一覧をご確認ください。

都道府県や市区町村 異動届出書(休業することを記載)
管轄税務署 異動届出書(休業することを記載)
給与支払事務所等の廃止届出書
労働基準監督署 労働保険確定保険料申告書
管轄年金事務所 健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届
公共職業安定所 雇用保険適用事業所廃止届

手続きにかかる費用

休眠会社にするための手続きには、特に費用はかからないため、無料で行うことができます。

しかし、専門家に相談して手続きをしてもらう場合は、社会保険労務士や税理士などに支払う手数料などが必要です。

休眠会社を復活させる方法は?

せっかく廃業ではなく休眠という形をとったなら、いつかは復活させないといけません。休眠会社を再開させるのは、とても簡単な手続きで済むので、詳しく確認しましょう。

休眠手続きと同じ手続きを行う

休眠会社を再開するときは、基本的に休眠手続きで行ったのと同じ手続きを行えば良いので簡単です。

具体的には、「再開届(異動届出書)」を税務署や市区町村役場、都道府県税事務所へ提出します。

休眠会社として存続していたなら、この手続きをするだけで再開できるので手軽ですね。

会社が消滅していないか注意する

休眠会社を復活させるのは簡単な手続きで済むと説明しましたが、注意しておきたいポイントがあります。

●みなし解散になっていないか
●届出が取り消しになっていないか

というように、登記上や税務上で会社が消滅状態になっていることです。

登記手続きをきちんと行っていないと、みなし解散されていたり、最悪の場合会社が消滅していたりすることもあります。

現状を確認するには、法務局から「登記事項証明書」をとってくださいね。これにより、消滅していることがわかったら、「設立登記」を改めてかけなければいけません。

また、事業所得がないと、休眠中に確定申告書を提出し忘れる可能性がありますが、2期連続出していないと青色申告の承認が取り消しになっているので、こちらも税務署への確認を行いましょう。

休眠会社をM&Aするメリットをそれぞれの視点から紹介

企業や事業を買収したり合併したりすることの総称であるM&A。

M&Aは、活動している企業でしか行われないと思うかもしれませんが、実は休眠会社をM&Aする事例も存在します。

上手く行えば、売却側にも買収側にもメリットのある休眠会社のM&Aですので、ここからはそれぞれの視点でのメリットを紹介します。

売却側のメリット

売却側が受けられるメリットは、大まかに以下の3つです。

●廃業するための費用や時間が必要ない
●高値で買取してもらえる可能性がある
●税金対策になることもある

まずは、廃業するためにかかる金銭や時間のコストが減らせます。廃業には7~10万円程度の費用がかかりますし、専門家に依頼するとその手数料も必要です。さらに、株主総会で決議をしたり、解散届の提出をしたり、手間もかかります。M&Aで売却することで、これらが必要なくなるのが1つ目のメリットです。

次に、企業によっては高値で買取してもらえる場合もあります。例えば不動産業や旅行業など許認可が必要な業界の場合、許認可を取得している休眠会社を買い取ることができれば、買収企業にとってはメリットです。

最後は、税金対策になることもあります。もし、高額で売却できなくても、個人株主はその譲渡損を他の所得と相殺して節税することができます。

買収側のメリット

続いては、買収側のメリットについて紹介します。

●価値ある会社を普通より安く買収できることがある
●資本金がなくても資本金の高い企業を所有できる
●会社を設立するための手続きが不要

1つ目のメリットは、通常ならば高値で価値がある会社を、それよりも安い価格で購入できる可能性がある点です。社歴の長い会社など、評価の高い会社が休眠状態になっていて、そちらを買収するとなったら、休眠していない時よりも安く買収できることがあります。

続いては、資本金の高い企業を、資本金の用意がなくても所有できることです。資本金が高いことが、会社の評価基準の1つとなることもあります。会社を設立する時にそれだけ資金を準備したという証明になるのが資本金だからです。

最後は、会社を設立する時に必要な手続きをせずに、株式会社を設立できます。会社を設立するときは、登記申請など書類の提出が必要ですが、休眠会社の買収をすればこれらが必要ないのがメリットです。

休眠会社のよくある質問

Q.休眠と廃業の違いはなんですか?
A.廃業は事業を終了することで、休眠は事業を一旦停止して後から再開することです。

Q.休眠会社にするメリットは?
A.廃業にかかるコストが必要なかったり、事業の復活が容易に行えたりすることが挙げられます。

Q.休眠会社にした後の注意点はありますか?
A.休眠した後も毎年税務申告を行うことや、さまざまな申告を放置してみなし解散にならないようにすることに注意しましょう。

まとめ

こちらの記事では、休眠会社についてのいろいろな情報を紹介しました。休眠会社とはどのような状態なのか、みなし解散や廃業、倒産との違いを解説し、休眠会社のメリットやデメリットも説明しました。
休眠会社にすることで、廃業とは違い後から事業を再開できるということをお伝えしましたが、一方で休眠中にも税務申告などのさまざまな事務作業が発生するため、場合に合わせて休眠か廃業かを選択する必要があります。

また、休眠会社にする手続きや、休眠会社を復活させる方法、休眠会社をM&Aするメリットなど、幅広い情報をまとめました。

事業を持っている方で、休眠させるか廃業にするか悩んでいるという人は、ぜひこちらの記事の内容を読んで進め方を検討してみてくださいね。

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